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暮らすみたいに旅する、とか安っぽい雑誌の特集のように「旅」をとらえたことはない。旅は、特別な時間でなくてはいけない。そして、特別な時間を凝縮したいと思っている。

この夏で、結婚して五年。一人旅も良いし、彼女との海外旅行も良いけれど、夫婦での旅は格別だと思う。

流れる空気は、日常。でも、空間が非日常。見たことがないものを見て、僕らは知らない風を知る。

ある人は、何かにお金をかけるのなら「モノ」ではなく、「経験」にかけなさいといった。経験に投資したお金というのは、無駄にならないそうだ。夫婦の旅も同じ。

旅から帰ると僕は、必ず一冊のアルバムをオーダーする。

ものすごく年をとって、「おじいさん」と呼ばれるようになった頃、僕はこの一冊一冊のアルバムを開きたいと思う。お茶でも飲みながら、壊れたレコードみたいに何度もなんども。「おばあさん」になった家内と一緒にそれを開くかもしれない。もしかしたら、僕はもう死んでいて、家内がひとりでそのアルバムを開くのかもしれない。

色あせた紙のアルバムには、僕らの笑顔があって、思い描いた未来の自分たちがそれをみて、また笑顔になるのかもしれない。旅という非日常の点がつながって、ひとつのラインを作る。そして、まるでシルクの布のようにしなやかな時間を織りなす。

サヨナラバンコク。

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