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VIE Hotel Bangkok 2014.1.1

毎年12月は、今年のテーマの達成度を自分なりに評価し、来年のテーマを立てます。これは、僕が23歳の頃に話した三十代の女性が 「今年は歌舞伎と決めたら、それを一年間勉強して、年末に集大成として歌舞伎を見に行ったりするの。」と話していたことに影響を受けて、ずっとやってきていることです。ちなみに 今年のテーマは、「足元を慥かめる」でした。(←ここまでは、毎年同じ書き出しです。)

2014年は、過去最高となる仕事の忙しさでしたが、心からプライベートを楽しんだ一年でもありました。バンコクでの年越し、7月チェンマイでの休暇、4月東京、10月横浜、12月東京、年末年始はクラビへ。と、ここ数年では最もアクティブに「旅」を楽しんだ一年でした。旅先に出かけて、大好きな人たちと出会い、再会し、多くの力をいただきました。美しい生き方をしている友人に感謝しています。

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 音楽大学時代のホルン同期生と 2014.4

今年、旅に出るたびに思い出す言葉がありました。

Too often travel, instead of broadening the mind, merely lengthens the conversation. (Elizabeth Drew)
心を豊かにすることもしないで頻繁に旅にでたとしても、それはただ単に会話が豊富になるだけである。

Travel is more than the seeing of sights; it is a change that goes on, deep and permanent, in the ideas of living. (Miriam Beard)
旅をするということは風景を見る以上の意味がある。それは、生き方を考える中で深く永続的に続く変化のことである。

本当の美しさを知り、自分自身を磨いていかなくては、いけないのだと思いました。そうじゃなければ、僕は何も知ることが出来ないし、大切な人たちと再会することも許されないのだと思いました。

自分自身の基本には、音楽が存在します。今年は、その音楽に関して大きな変化がありました。アレクサンダー・テクニーク講師でホルン奏者のバジル・クリッツァーさんとの出会いです。ラッキーなことに今年3月に札幌市内でレッスンを受けることが出来ました。13歳から、26年間見なおしたことがなかった楽器の演奏姿勢を見直し、大幅に変化させました。

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 札幌市内でのレッスン風景 2014.3

バジル先生のレッスンで、心に響いた言葉があります。

完璧主義は、前進を阻む怠慢です。
理想と現実の間を苦しみで埋めるだけであって、決して近づかない。
 ホルンを抱えたばかりの中学生のときのようなチャレンジ精神を完璧主義という名の怠慢が蝕んでいたのです。普通の演奏をして、ミスを減らすほうが良いと思っていたのです。大きくミスをしたとしても、もっと音楽に向かっていったほうが良かったというのに。3月のレッスン後、リビングにホルンを出したままにして、仕事の合間や僅かな時間に数分でも良いのでホルンを吹きました。8月の演奏会では、ミスを恐れずに大胆に吹くことに。結果、思っていたよりもミスの数は少なくて、思い切りの良い演奏が出来たと思います。演奏後の充実感は、ここ十年ほど味わったことがないくらい心地が良いものでした。音大時代、師事していたNHK交響楽団主席ホルン奏者だった松崎裕先生に「ミスを恐れてはいけない」とよく言われていましたが、その意味が39歳になってようやくわかった感じがしました。
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ホルンのメンバーと 2014.8
そして、「誰のために音楽をやるのか」「何のために音楽をやるのか」が不明確になっていたことに気づきました。今年はっきりしたんです。僕は、「自分のためにホルンを吹きます」あくまでも自分のために。ホルンを吹くことは、僕にとっては仕事でもないし、誰かに認めてもらうための手段でもありません。荒っぽい書き方をすれば、他人は、どうでも良いのです。僕が楽器と向き合って、神聖なる音楽を生み出すという行為を淡々と行えば良いと。
12月、練習の成果を確認するためにホルンを抱えて東京に行きました。ホルンを抱えて飛行機に乗るのは、1997年3月以来のことでした。1993年、音大入試のときに初めてホルンを持って上京した17歳の頃のことを思い出しながら。
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結果、音楽が心から楽しくなりました。「吹きたくて仕方がない」みたいな学生時代の気持ちが戻ってきて、来年40歳を迎えることなど本当にどうでも良くて、とにかく音楽をやりたくなったのです。同時に自分自身で殺してきた自分のアーティスティックな部分をもっと表面に出そうと思いました。ホルンの演奏姿勢が変わっただけではないのです。僕の音楽と生き方が変わりました。バジル先生には、感謝の気持ちで一杯です。
 「足元を慥かめる」
僕の基本となる部分に「大切な友人と音楽」があることを確かめる一年でした。友人と過ごす時間は、僕にとって何よりも美しい時間で、音楽と向き合う時間は、好きな女の子に告白するみたいに切ない行為です。言葉や文章で何かを伝えることが苦手だった17歳の頃、僕は音楽を選びました。音楽の向こう側には、必ず友人がいて、常に自分を理解してくれる存在でした。(向こう側に人がいる。心から集中出来るという理由で音楽と同じようにワインも愛しています。)
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横浜市内で高校時代の吹奏楽団の仲間と 2014.10
 美しい音楽を愛したことで、美しい人たちとの出会いをいただきました。音楽の神様がいるんだとしたら、僕は何度も何度もお礼を言いたいです。
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2015年の目標は、「見極める」にします。
秋、「エッセンシャル思考(グレッグマキューン著)」という本を読みました。タイムマネジメントやライフハックではなく、大切なものは何かを見極めるという内容。ここ数年、仕事もプライベートもヴォリュームが増えてきて、忙しく過ごしています。2015年はエッセンシャル思考で大切なものは、大切に・・・物事をしっかりと見極めていきたいと思います。そんな風に過ごして、また何か美しいものとの出会いがあることを期待しています。
今年もこのブログを御覧いただき、ありがとうございます。皆様、どうぞ良い年をお迎えください。